取引の個数はどのように判断されますか?
これは貸金契約の基本契約の状況に大きく関わります。
1 基本契約が複数の場合
第1の基本契約に基づく取引とその後の第2の基本契約に基づく取引があった場合に、第1、第2の取引を1個とみることができるか否かは、以下の①~⑦の事情を基に判断されます。
①第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が行われた期間の長さ、②第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間、③第1の基本契約についての契約書の返還の有無、④借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無、⑤第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況、⑥第2の基本契約が締結されるに至る経緯、⑦第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等(最高裁判所第二小法廷平成20年1月18日判決)
なお、裁判官の論文を読みますと、②の第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付までの期間の長短(短ければ短いほど一個の取引と認められやすい。)が最も重要で、これをまず考慮した上で他の要素を検討するとの指摘があります(別冊判例タイムズ33号53頁)。
2 基本契約が締結されていない場合
第1の貸付とその後の第2の貸付があった場合に、各貸付における金額や与信審査の有無、各貸付や各返済の期間的な接着の程度、各貸付の方法や貸付条件の異同等の諸事情から判断して、実質的には従前の貸付けの借換え又は貸増しにすぎないものといえるか否かという観点から1個の連続した貸付取引であると評価することができるか否かを判断する。
3 基本契約が一つの場合
まずは、基本契約の解釈の問題として債務の弁済が借入金の全体に対して行われている約定になっているかを検討し、これが肯定される場合は全体を1個の取引とみて一連計算し、これが否定される場合は前記2の諸事情を判断して1個の取引か否かを判断する。