解雇が無効となる「解雇権の濫用に当たる場合」とはどのような場合ですか?
解雇権の濫用に当たる場合とは①客観的に合理的な理由を欠き、又は②社会通念上相当であると認められない場合を言います。その場合には解雇権の濫用として解雇は無効となります(労働契約法16条)。
具体的に説明しますと、
①客観的に合理的な理由を欠くとは、以下のⅰからⅳ等の解雇に値する事由がないことを言います。
ⅰ 労働者の労務提供の不能、労働能力又は適格性の欠如・喪失
傷病やその治癒後の障害のための労働能力の喪失、勤務成績の著しい不良、事故欠勤30日に及んだとき、重要な経歴の詐称などによる信頼関係の喪失
ⅱ 労働者の規律違反の行為
ⅲ 経営上の必要性に基づく理由
合理化による職種の消滅と他職種への配転不能、経営不振による人員整理(整理解雇)、会社解散など
ⅳ ユニオン・ショップ協定に基づく組合の解雇要求
②社会通念上相当と認められないとは、解雇することが酷であることを言います。
裁判所は一般に、解雇の事由が重大な程度に達しており、他に解雇回避の手段がなく、かつ労働者の側に宥恕(寛大な心で罪を許すこと)すべき事情が殆どない場合にのみ解雇相当性を認めています。